97付録C ジョルダン標準形C.1 ジョルダンの標準形第5章でみたように,Aの固有方程式∣∣∣A−tI∣∣∣=0がことなる根t=λ,µをもてば,それぞれを固有値とする固有ベクトルが存在して基底となり,Aは対角化可能である.では,重根λ=µのときはどうだろうか.本節では固有値λが重根のときを議論する.まず,固有値λの固有ベクトルで方向がことなるwとυがある場合には,A(υw)=(λυλw)=λ(υw) かつ ∣∣∣υw∣∣∣0となる.この式の両辺に左から(υw)−1をかけるとA=λIとなる.つまりAはスカラー行列(単位行列のスカラーλ倍)で,はじめから対角型である.つぎに,行列Aの固有値λのことなる方向の2つの固有ベクトルはない場合を考察しよう.行列A=⎛⎜⎜⎜⎜⎝abcd⎞⎟⎟⎟⎟⎠の固有方程式の左辺をpAとかく.pA(t)=t2−(a+d)t+(ad−bc).このtの2次式を2次正方行列Aの特性多項式とよぶ.このpA(t)のtにAを代入すると零(ゼロ)行列になることは直接計算でたしかめることができる.ただし,tにAを代入した場合,pAの最後の項ad−bcには単位行列Iがかかっていると考える.すなわち,定理C.1.(ケーリーハミルトンの定理) Aを2次正方行列⎛⎜⎜⎜⎜⎝abcd⎞⎟⎟⎟⎟⎠とする.このときpA(A)=A2−(a+d)A+(ad−bc)I=O.(C.1)
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