線形代数入門
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第5章固有値と固有ベクトル81なわち,⎛⎜⎜⎜⎜⎝a−λbcd−λ⎞⎟⎟⎟⎟⎠=(a−λ)(d−λ)−bc=λ2−(a+d)λ+(ad−bc)=0.(5.21)これが固有値λが満たすべき方程式で,Aの固有方程式とよぶ.なお,(5.21)における−λの係数a+dをAのトレースとよび,trAとかく.複素数の範囲で考えれば,方程式(5.21)はかならず解λをもつ.これが固有値の候補だが,行列式0の行列はかならずある方向υ0を「消し」⎛⎜⎜⎜⎜⎝a−λbcd−λ⎞⎟⎟⎟⎟⎠υ=0となる(第4.3節定理4.3参照).これはAυ=λυにほかならない.つまり固有方程式の1つの解から,固有値と固有ベクトルが1つ(1方向)得られる.2次方程式(5.21)の2解をλ,µとし,λµとすれば,それぞれから固有ベクトルυ,wができる.(5.18)の要領でAを対角化するには∣∣∣υw∣∣∣=det(υw)0かどうかが問題だが,λµならば自動的に正しい.すなわち,定理5.2. 2次行列Aの固有ベクトルυ,w(0)について,これらの固有値λ,µがことなれば∣∣∣υw∣∣∣0である.証明. 問題の行列式が0とする.するとυ,wは平行で(第4.3節定理4.3),ある数aがあってaυ=w.この式にAをかけるとλaυ=µwとなる.aυ=w0なのでλ=µとなり,仮定に反する.証明終わり.したがってつぎの定理を得る.定理5.3. 2次正方行列は,固有方程式が重根をもたないかぎりかならず対角化できる.Allrightsreserved,OkadomeLab.

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