線形代数入門
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78第5章固有値と固有ベクトルを2次形式という.問1. A,Bを2次行列とする.(AB)⊤=B⊤A⊤を示せ.5.4固有ベクトルと対角化第5.2節で述べた直線に関する折り返しや,第5.3節で述べた2次曲線の例で示したように,それぞれの行列にはそれぞれ特別な方向,すなわち「固有の方向」があると考えてその方向を座標系に使うことで,問題がわかりやすくなることが多い.直線に関する折り返しのときの折り返しの軸lの方向ベクトルや法線ベクトルのように,行列Aをかけても,方向がかわらないベクトルが行列Aの「固有の方向」である.以上の洞察をもとに,行列の固有値と固有ベクトルを導入しよう.定義. Aを正方行列とする.ある数λに対してAυ=λυを満たす0でないベクトルυ0があるとき,λをAの固有値という.またυをAの固有値λの固有ベクトルとよぶ.直線に関する折り返しのように,あらかじめ行列であたえられていない線形変換fについても,υ0がf(υ)=λυを満たせば,λをfの固有値,υをfの固有ベクトルとよぶ.ここで注意してほしいことは,行列にせよ線形変換にせよ,固有ベクトルではないベクトルu0に対する変換後のベクトルu′はuとことなる方向をもつことである.注. 行列Aの要素がすべて実数であっても固有値や固有ベクトルの成分は複素数になりうる.また,定義により,固有ベクトルは零ベクトルであってはならないが,固有値は0もとりうる.例2. 原点をとおる直線lに関する平面の折り返し写像fを表わす行列Aについて,lの方向ベクトルυ1=⎛⎜⎜⎜⎜⎝cosθsinθ⎞⎟⎟⎟⎟⎠はAの固有値1の固有ベクAllrightsreserved,OkadomeLab.

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