70第5章固有値と固有ベクトル(5.1)の形の和を,ベクトルυ1とυ2の線形結合または1次結合とよぶ.また,座標系を定める資格のあるベクトルの組υ1,υ2を基底とよぶ.すなわち定義. 2つの2成分実ベクトルυ1,υ2がR2の基底をなすとは,すべてのベクトルがυ1,υ2の線形結合(5.1)で1とおりにかけることをいう.基底のこの定義は,s,tを実数としたとき,sυ1+tυ2=0 なら s=t=0(5.2)が成り立つことと同値である.なぜなら,υ1とυ2が基底のとき,もしs0とすると,υ1=−(ts)υ2となりυ1とυ2が平行,あるいは零(ゼロ)ベクトルとなり,υ1と平行なベクトルか零ベクトルしか表現できず,υ1,υ2が基底であることに矛盾する.t0のときも同様である.逆に,(5.2)が成り立つとする.このとき,あるベクトルυがυ=s1υ1+t2υ2=s′1υ1+t′υ2と2とおりにかけたとすると,(s1−s′1)υ1+(t1−t′2)υ2=0となるので(5.2)よりs1=s′1,t1=t′2となり,結局υは1とおりにかけている.また∣∣∣υ1υ2∣∣∣=0なるときはυ1とυ2が平行なのでυ1とυ2は基底ではない.逆に,∣∣∣υ1υ2∣∣∣0としよう.このとき第4.3節定理4.3において,A=(υ1υ2)とし,u=⎛⎜⎜⎜⎜⎝st⎞⎟⎟⎟⎟⎠とすれば(5.2)が成り立つことがわかる.よって,υ1とυ2が基底をなすことは∣∣∣υ1υ2∣∣∣0と同値である.まとめると,定理5.1. υ1,υ2を2成分実ベクトルとする.1.υ1,υ2がR2の基底であるのは,s,tを実数としたとき,sυ1+tυ2=0ならs=t=0が成り立つときかつそのときにかぎる.2.υ1,υ2がR2の基底であるのは,∣∣∣υ1υ2∣∣∣0となるときかつそのときにかぎる.注. υ1,υ2の線形結合で任意のベクトルを表わすとき,表わしかたが1とおりでないと,点の座標が1とおりでなくなるという問題が生じる.つまり「υ=sυ1+tυ2=s′υ1+t′υ2 ならば s=s′, t=t′」が成Allrightsreserved,OkadomeLab.
元のページ ../index.html#70