線形代数入門
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64第4章行列式4.2行列式の性質行列式の重要な性質としてつぎの乗法性がある.det(AB)=det(A)det(B),(4.2)ここでA,Bは任意の2次正方行列である.この公式は,行列の積と行列式の定義から直接たしかめることができる.行列式の絶対値は面積比という定理によれば,乗法性は「線形変換による面積比がAでk倍,Bでh倍なら,積ABではkh倍」ということを意味する.符号についても,(4.2)によれば「積の行列式の符号がそれぞれの行列式の符号の積」だが,これも「紙を二度裏返すともとどおり」ということである.さらに(4.2)でB=A−1のときを考えれば,det(AB)=detI=1なのでdet(A)det(A−1)=1.∴det(A−1)=(det(A))−1(4.3)が成立する.すなわち∣∣∣A−1∣∣∣=∣∣∣A∣∣∣−1である.例. k倍を表わすスカラー行列kIについて,行列式はk2である.逆行列はk0なら存在し,その行列式は∣∣∣k−1I∣∣∣=k−2である.等式(4.2)と(4.3)は2次正方行列にかぎらず,3次,4次,...といった一般の正方行列でも成立し,さまざまな場合で用いられる.その重要性に鑑みて定理としてまとめておこう.定理4.2. A,Bを正方行列とする.このとき以下が成り立つ.1.det(AB)=det(A)det(B),すなわち∣∣∣AB∣∣∣=∣∣∣A∣∣∣∣∣∣B∣∣∣.2.det(A−1)=(det(A))−1,すなわち∣∣∣A−1∣∣∣=∣∣∣A∣∣∣−1.問1. A,Bを2次正方行列とする.乗法性∣∣∣AB∣∣∣=∣∣∣A∣∣∣∣∣∣B∣∣∣を示せ.問2. 以下の行列について∣∣∣AB∣∣∣=∣∣∣A∣∣∣∣∣∣B∣∣∣が成り立つことを行列式を計算することにより示せ.Allrightsreserved,OkadomeLab.

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